手作りの科学としての夢研究No4

■12 夢事例4「子犬が蝉になる夢」

●夢事例4 「子犬が蝉になる夢」

 2019年12月4日(金)。前の方は憶えていない。
 子犬のような何かと友だちになったのだった。
 そのうち、その何かは、ビニール製の犬小屋のような中に籠ってビニール製の壁にくっつき(図省略)、「アリガトウ」と呟く。そして、動かなくなった。蛹になりつつあるのが分かった。
 背中がしだいに割れて、巨大な蝉が姿を現す。
 その後、蝉は、飛んで行ったわけではなく、ペット屋みたいなのがいて、そこに貰われて行った。
 そこに、妻が戻ってくる。せっかくの脱皮の場面は見なかったのだが、何か言った。
 私は、これがそうだ、と、ペット屋の屋台のようになった店先を指差す。
 このあたり、店先の光景は、記憶が薄れてぼんやりしているのか、それとも元々ぼんやりした光景なのかは分からないが、はっきりしない。後者かもしれない。夢の中で、随分ぼんやりしてるな、と思ったことを覚えているような。

 脱皮して巨大な蝉が現れるのは、涼宮ハルヒシリーズの「エンドレスエイト」で、キョンが、等身大の蝉が戸口を叩く場面を想像して気分くなったというくだりを、連想させる。
 「アリガトウ」は、同じシリーズの『涼宮ハルヒの消失』で、長門有希キョンに、「ありがとう」という場面を連想させる。

●夢の物語構造分析

・序幕(提示) 子犬のような何かと友だちになったのだった。
・第二幕(展開)そのうち、その何かは、ビニール製の犬小屋のような中に籠ってビニール製の壁にくっつき(図省略)、「アリガトウ」と呟く。そして、動かなくなった。蛹になりつつあるのが分かった。
・第三幕(クライマックス)背中がしだいに割れて、巨大な蝉が姿を現す。
・終幕(終結)その後、蝉は、飛んで行ったわけではなく、ペット屋みたいなのがいて、そこに貰われて行った。

 夢はまだ終わっていないが、これだけで四幕構造として完結している。だから、「そこに、妻が戻ってくる」のくだりは、別の物語のようで、そこにも四幕構造が見て取れないこともない。

・序幕(提示) そこに、妻が戻ってくる。
・第二幕(展開)せっかくの脱皮の場面は見なかったのだが、何か言った。
・第三幕(クライマックス)私は、これがそうだ、と、ペット屋の屋台のようになった店先を指差す。
・終幕(終結)このあたり、店先の光景は、記憶が薄れてぼんやりしているのか、それとも元々ぼんやりした光景なのかは分からないが、はっきりしない。後者かもしれない。夢の中で、随分ぼんやりしてるな、と思ったことを覚えているような。

 このように構造化してみると、後の物語の中で前の物語が話題にされているという、入れ子構造が認められる。ただし現実に劇であるように前の物語は単に話題にされただけではなく、私自身が後の物語よりもむしろ迫真的に体験していると感じられる。それに比べると後の物語は、「夢の中で、随分ぼんやりしているな、と思った」とあるように、夢の映像を半分醒めた意識で評価しているようなところがあり、迫真性が薄れている。

●夢の異世界分析+現象学的分析

・前の物語。
 序幕~第二幕~第3幕~終幕 「子犬のような何か」→「蛹」→「蝉」→「ペット屋に貰われていく」という推移。空想的設定。連想すればテクストが見えてくる。
 第二幕 「子犬のような何かは「アリガトウ」と呟くと‥‥」は、『涼宮ハルヒの消失』の中での、ヒロインの一人長門有希が、「ありがとう」と主人公のキョンに言う最後の場面を連想させる。
 第3幕 巨大な蝉は、同じシリーズの『涼宮ハルヒの憂鬱』の中で、等身大のセミが恩返しに来て戸口にいるのを想像して気分が悪くなった、というキョンの語りを連想させる。
 ラノベ&アニメの「涼宮ハルヒシリーズ」の世界観が見えてくる。そうすると、「子犬のような何か」も『涼宮ハルヒの憂鬱』のかなり初期のエピソードで、SOS団の活動で、市中探索を長門有希とペアですることになったキョンが、「「行くか」といって歩き出すとついて来る。段々俺もこいつの扱い方が分かってきた」という場面を連想させる。宇宙人妄想に囚われている無口で無表情の読書少女と思ったのだが、キョンに対しては一途で従順なのである。
 そこから、「子犬のような何か云々」は、子犬のような長門有希が巨大セミのように恩返しに来て、「アリガトウ」と呟く、というような、涼宮ハルヒシリーズの世界観を踏まえた物語だと分かって来る。

・後の物語。
 一転して現実にありうる話になる。空想的な物語は妻への話の中に入れ子になり、証拠として「これがそうだ、と、ペット屋の屋台のようになった店先を指差す」が、「店先の光景は、記憶が薄れてぼんやりしているのか、それとも元々ぼんやりした光景なのかは分からないが、はっきりしない」と、もはや証拠として機能しなくなっている。

●夢の意味――深層のテクスト

 思いきってまとめる。「涼宮ハルヒシリーズ」での、(一人称で語る)主人公キョンとヒロインの一人長門有希との(実際の物語では長門有希の片思いに終わった)恋物語を、現実に体験したかのように感じていて、それを妻に話す。けれど、現実だという証拠を示すことができないでいる。

■13 夢事例5「時間割・教室が分からない夢」

●夢事例5 「時間割・教室が分からない夢」

 2019年12月16日(月)。
 非常勤講師を務める大学にいた。
(夢でよくあることだが)教員なのに時間割・教室が分からない。教務事務室の前で、教員用時間割がないか、訊いていた。
 その後、その大学の教員らしき人物と同行して歩いている。一学生として聴講したい講義があったので、その担当教員かもしれないと思いながら。「日本文学ですか‥‥」と尋ねるが、答えがはっきり思い出せない。その人物が言うには、私が聴講したい講義の主の姓は度忘れしてしまっていたが、名は確か「官九郎」とかいったとか、答える。
 「‥‥官九郎、あれは凄いですね。ドストエフスキー研究で」と、その人物が言ったのか、私が言ったのか(メモでは判別がつかないが)。
 バスに乗って終点まで行く。これから関空からフライトする予定。
 でも、バスの止まったビルに入っても、空港らしいところがない。
 二階へ上がり、通路を探して歩いているうちに、あるドアがガラス張りで、中で授業らしきことをやっているのがみえる。
 ノックして、関空はどこか尋ねると、出てきた(たぶん女の)先生が、道順を説明してくれる。「ここからずっと真っ直ぐあっちへ進んで、右(左?)へまがって‥‥」と説明するが、複雑なので、生徒をひとり(小学生?)つかまえて来て、案内するよう指示。
 この辺で目が覚めた。

 教員なのに時間割・教室が分からずウロウロするという夢は、かなり頻繁に見る。
 関西にいてそこから空港に行くが、見つからなくて焦るという夢も、よく見る。連想すると、30歳で、初めての就職で高知大学へ辞令を受け取りにいった時に、京都から直行バスで大阪空港に行くとちゅう、渋滞に巻き込まれてフライトに乗り遅れてしまい、空港そばのホテルに泊まって翌日、高知についたことが思い出される。その時、出迎えてくれたY助教授(当時)は、前の晩は高知空港で待ちぼうけを食わされ、翌日改めて出迎えてくれたのだった。
 そんな、迷惑をかけたYさんも、夫人からの喪中欠礼の葉書で、先月亡くなったことを知った。79歳と書いてあった。感無量である。

●夢の物語構造分析 

・序幕(提示) 非常勤講師を務める大学にいた。/教員なのに時間割・教室が分からない。教務事務室の前で、教員用時間割がないか、訊いていた。
・第二幕(展開)その後、その大学の教員らしき人物と同行して歩いている。(中略)「‥‥官九郎、あれは凄いですね。ドストエフスキー研究で」と、その人物が言ったのか、私が言ったのか(メモでは判別がつかないが)。
 ・第三幕(クライマックス)バスに乗って終点まで行く。これから関空からフライトする(中略)通路を探して歩いているうちに、あるドアがガラス張りで、中で授業らしきことをやっているのがみえる。
 ・終幕(終結)ノックして、関空はどこか尋ねると(中略)‥‥」と説明するが、複雑なので、生徒をひとり(小学生?)つかまえて来て、案内するよう指示。

 夢の前半(序幕~第二幕)と後半(第三幕~終幕)は同じテーマの反復と思われる。

●夢の異世界分析+現象学的分析+夢の意味

 慣れてきたせいか、夢の意味まで一挙に分かったので、まとめて述べる。

 前半の意味は、自分の職場にいても迷宮のなかに迷い込んだように感じている。後半の意味も、(私が空港を使うのは海外の学会に出張する時にほぼ限られるが、関空からのフライトは最初の勤務先である高知大学へ初めて行った時の体験がもとになっているので)自分の職場のなかで迷宮に迷い込んだように感じていることの、反復である。

  このように同じテーマが反復されていることは、強調と見てよい。自分の職場というアトホームであるべき場所でも迷宮に迷い込んだように感じているとは、夢全体の意味は、そもそもこの世界を巨大な迷宮に迷い込んだように感じている、ということになるだろう。

■おわりに 「心理的現実」とは世界のどこにあるのか?

 ここで、「深層のテクスト」が描き出すという「心理的現実」とは、世界のどこにあるのか、という疑問が起こるかもしれない。

<なお、「夢の現象学169~171の簡易要約版は、『こころの科学とエピステモロジー』第2号の巻頭記事「エディトリアル 手作りの科学としての夢研究」としてダウンロードできます。>

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