前回都知事選(2016)での小池百合子候補への社民党による差別的攻撃を思い出す

都知事選は小池百合子さんの圧勝に終わりました。よかったですね。

 前回都知事選で、社民党党首による差別主義的攻撃を受けた時から、小池百合子支持を決めていましたから(都民ではないですが)。

 差別主義的攻撃というのは、現在の社民党党首である福島瑞穂氏が、選挙宣伝カーで、「小池百合子さんは女性ではなくて女装したタカ派の男性です」といったトンデモない言いがかりを連呼して回っていたことを指します。

 これが、女装男性というLGBTへの通俗的なマイナスイメージを利用した差別的発言であることは、反差別運動が進展した現在では、明らかでしょう。

 社民党の、時代に取り残された体質は、この何十年、変化していないようです。

 つい最近も、こんな事実を知りました。

 社民党の前身と言えば日本社会党。その社会党の理論的中枢にいた向坂逸郎氏が、東郷健氏(ゲイを代表して毎回選挙に出ていた人)と1978年に週刊ポストの企画で対談した際に、「ソビエト共産主義になったらお前の病気は治ってしまう」と発言したというのです(東郷健著『常識を越えて オカマの道70年』より)。

 もっとも、2002年には、旧社会党系の保坂展人世田谷区長が、東郷健氏の出版記念パーティ席上で、「ゲイは病気であり、ソビエト社会主義になれば治る」と発言したが、これは誤りだ、申し訳ない、と陳謝しました。また、向坂氏が代表を務めていた社会主義協会も同年に機関誌『社会主義』で、彼の発言を自己批判しているということです(以上、森口朗著『左翼老人』扶桑社新書、2019、pp159-160より)。

 けれども、個別的に反省したり謝罪したりしても、古い左翼的人間観自体が変わらなければ同じことをくりかえしてしまうでしょう。前回都知事選での福島党首のTG差別がその例です。さすがに今回はそのようなことはなかったようですが、またいつか、別のことでくりかえしてしまう可能性があります。

 古い左翼的人間観とは、マルクス主義の「存在拘束性」という世界観に由来します。文化や思想やさらには人間の精神的な正常異常も、資本主義的生産様式といった下部構造によって決定され(拘束され)ているという社会学還元論です。「存在が意識を決定する」というテーゼで表されます。

 だから文化や芸術も、精神的な正常異常も、政治的に価値判断できる、ということになってしまいます。行きつくところは中国や北朝鮮のような全体主義国家です。

 これについては、2020年4月1日記事に詳しく書き、「存在拘束性」に代わるオルタナティヴとしての、現象学でいう「視点拘束性」についても説明したので、くりかえしませんが。

 なお、この4月1日記事は、「学問の自由と民主主義のための現象学」という題で、大学の自治と学問の自由に関するブックレットの一冊に収録される予定となっています。

 私としては初めての、政治的メッセージ性を含む公刊物ということになります。

 出版されたらお知らせします。