研究日誌(2021/1/21)ヤスパース『精神病理学原論』/アモーダル知覚

ヤスパース精神病理学原論』

「もうかなりまとまりのない患者はこう述べた。『私には安らぎはこれっぽちおなくなってしまい、何千年もさまよい廻って、知らないうちにくりかえし生れ変っているのだが、こうなるのは世界の創造の力によるのだ。』(p.72)

 精神病理学の事例であるが、輪廻転生の教義を自力で作り出す体験が存在することを、物語っていはしないか。

●アモーダル知覚

 たとえ、Nanay[1]のいうように様相なき知覚がimageryの働きだとしても、そのimagery自体が、フッサールの志向性分類によれば定立的準現前化であって、visualizationのような非定立的準現前化ではないだろう。
 では、なぜ特定のimageryが定立的で(対象の実在性確信を伴い)、他のimagery(visualization)が非定立的(実在確信を伴わない)かというと、モーダルな知覚内の構造的不変項の違いと言うしかあるまい。したがって、これは、花瓶の背面を直接知覚しているというギブソン流の主張に還元されるのだ。(2020、12月24日、国図にて)。

[1]Nanay, B. (2010). Perception and Imagination: Amodal perception as mental imagery. Philosophical Studies, 150, 239–254.