日本学術会議の抜本的改革を求める!

■もう数週間前のこと、日本学術会議が、会員選考の経路をより透明化することを中心とした改革案を出した、という新聞記事を読みました。いまさらという気もするが、外部からは分かりにくい会員選考の手順が透明化されるというなら、一歩前進と言うべきかもしれません。

 ところで私も、昨年1月、『表現の自由と学問の自由:日本学術会議問題の背景』(寄川条路編、社会評論社、2021)というブックレットに「学問の自由と民主主義のための現象学」と題する論考を寄せたことは、このブログにも書きました。ブログ記事はこのリンク先で読めるのでご参考までに。

 拙論「学問の自由と民主主義の‥‥」は学術会議問題が起こるかなり前に書いたので、出版間際になって出版社側に学術会議の事にも触れるようにと言われて最後に一文を追加したものです。けれども、刷り上がったものを見ると、カット部分もあって少しばかり文脈的におかしくなっていました。そこで元の文章を以下に出すとー-

 ―学術会議問題にも触れるよう編者に言われたので、当時、知人に語った言葉を記しておく。「以前某学会の役員をしていた頃、学術会議会員学会枠が回ってきて推薦したことがあったが、いつのまに前任会員が後任を推薦するように変ってしまった。いまどき前任が後任を推薦する人事など北朝鮮である。どっちもどっちだ」。

 その通りなのです。ずっと以前は学術会議会員は選挙だったそうで、その後各学会の推薦になったのですが、私がこの学会の役員を辞めた2000年以後、知らない間に前任者が後任を推薦する制度に変えられてしまったようです。

 従って私ども普通の学会所属の研究者には、学術会議会員に対するいかなる人事権もないのです。だから、日本の研究者を代表する組織だなどと学術会議側が自称したとしても、僭称にすぎません。

 学術会議問題が起こった菅政権の時期には、私の所にも政府に抗議するアピールに署名せよという文書が回ってきたのですが、学術会議会員を選ぶ権利を一方的に奪っておいて今更署名してくれ等と、厚顔無恥もいいところだと思い、無視しておきました。

 にもかかわらず「どっちもどっちだ」というのは、当時閣外にあった岸田さんが「乱暴なやり方だ」と批判したように、前触れなしに任官を拒否するのはやはり問題だからです。

 もし真に研究者を代表する組織が必要ならば、同じブックレットの「序論」で東大名誉教授の末木芙美人氏が書いておられるように、政府とは完全に独立な民間組織として各学会からボトムアップ式に選出し、手当てが必要なら学会が分担拠出するようにすべきなのです。

 政府はまずそのような問題提起を学術会議側にして組織改革を求めるべきだったのです。

 いずれにしても、私ども一般の研究者に選任権がないような組織を、一部の偽リベラルスターリニスト的な人々がキャンペーンを張っていたように全国の研究者の代表だなどと僭称するのは、それこそ学問の自由の侵害というべきでしょう。まさに北朝鮮なのです。

 重ねて主張します。日本学術会議は政府から独立の、諸学会から代表者を送り込んで手当も諸学会が分担するような組織へと、抜本的に改革すべきなのです!


【付記】この記事は時機外れと見えるかもしれませんが、最近、日本心理学会ニューズ上で、「2022/6/29 日本学術会議の活動と運営に関するご連絡」というリンクが張ってあって、その中で梶田会長の名義で、6名の任用問題はなお任用の実現に向けて官房長官と調整を続けてゆく、といったことが書いてあったので、触発されて書きました。任用問題などさっさと棚上げにして、早急に抜本的な改組改革に取り掛かるべきはないでしょうか。