研究日誌(2024/5/6)シュミッツ『身体と感情の現象学』に引用されたミショーのメスカリン体験

■ヘルマン・シュミッツ『身体と感情の現象学』(小川たかし編、産業図書、1986)を図書館で手に入れて読む。

「アンリ・ミショーはメスカリンによる幻想について報告しているが、そのなかでかれは、とあるグラフ雑誌の表紙を飾るカヴァーガールの写真を見たときにかれのうちでそのような状況が生まれた様子を、ゾクゾクするようなタッチで描いている(17)。」(第三章、p.158)

 とあるのが目に留まったので、章末注(17)を見ると、ドイツ語訳に加えて原文:

L’infini turbulente, Paris 1957

と言及があった。そこで図書館でミショー全集(青土社)を探してみると、巻Ⅳの「荒れ騒ぐ無限 第六の実験」に、次のようなくだりを見つけた。

「わたしは雑誌を手に取る。‥‥表紙の上の眼に入った最初の写真を眺める。
 それは、わずかに微笑している生き生きとした娘の肖像写真で、特にその目には楽しみの小さな光が輝いている。
 わたしは彼女を眺める、そして興味を引かれずに目を離す。わたしは援軍の来るのを待つ。すると、突然、私の知らぬ間に開いていた落とし穴の中に消えてしまったみたいに、そこにわたしは落ちたのに違いなかった、《わたし》はもういないのだ。こんな話は実際聞いたことがない!
 雑誌をまた手に取ってその娘を眺めていた時に、わたしにはやっとそのわけがわかった。彼女がわたしになっていたのだ。」(pp333-334、小海永二訳、1987)