研究日誌
■「精神疾患とスティグマ:わかっていること・いないこと」(山口創生著、『精神保健福祉』Vol.54, no.3, 216-223, 2023) を読む。 特に次の段落が目を引いた。 「‥‥精神疾患に対する正しい知識が長期にスティグマの減少につながるかは、近年の研究から疑問が…
■昨年末の記事で紹介した 『「今までありがとう、これからもお願い」: 精神科医療に翻弄された父親の12年の闘い 』(吉村敏男著、Kindle版) より、特に以下のくだりが印象に残ったので抜粋する。---------------------- 元農水次官が精神病の四十四歳の長…
ランキング参加中精神医療 ■『「今までありがとう、これからもお願い」: 精神科医療に翻弄された父親の12年の闘い 』(2022)、『悪魔の処方箋』(2023).ともに吉村敏男著、Kindle版.Amazon Services International LLC.を読む。 色んな意味で震撼させら…
ランキング参加中精神医療 ■『統合失調症のノンアドレナリン説:開けゆく展望』(山本健一著、星和書店、2023)を読む。 第八節 脳も心身症となる(p.289ff) という小見出しの付いた興味深い節を見つけたので、忘れないうちに肝要な部分を引用しておきたい。…
ランキング参加中精神医療 ランキング参加中社会問題 ■「統合失調症の脳病態解明の到達点・未到達点」(柳下祥・笠井清登)『医学のあゆみ』(Vol.286,2023.8.5)を読む。 「症候群に対して対症療法として各困難に対する改善を支える生物学的な治療の開発と…
ランキング参加中精神医療 ■『ストール精神薬理学エセンシャルズ:神経科学的基礎と応用Ver.5』(S.H.Stahl, 仙波純一他(訳)、メディカルサイエンスインターナショナル、2022)は、どんな精神医学テキストよりも詳しくてしかもわかりやすいが、1万2千5百…
ランキング参加中精神医療 ■「脳は内から世界をつくる」(G.ブザーギ 日経サイセンス 2023.10月号、78-85)より、引用する。 かつて若い講師だったころ、私は医学生向きの講義で、神経生理学を教科書どおりに教えていた。脳がいかに外界を知覚し、身体を制御…
ランキング参加中精神医療 ■『マインド・フィクサー』については、研究日誌(2023/9/4)でも引用したが、ようやく読了し、そして結論の末尾に近く、意義深い文章をみつけたので、抜粋しておきたい。 「これまでとは対照的に、新しい精神医学は謙虚さを美徳と…
ランキング参加中精神医療 ■池淵恵美著『統合失調症は治りますか:当事者・家族・支援者の疑問に答える』日本評論社、2022)より、抜粋する。 「Q21 統合失調症という病気は治りますか。 Ans 私が一番残念に思っているのは、「人類がまだ統合失調症を克服で…
■『マインド・フィクサー:精神疾患の原因はどこにあるのか?』(アン・ハリントン、松本 俊彦/監訳、金剛出版、2022 )を読む。 1963年から始まったアメリカの脱施設化について‥‥ 「だが脱施設化による地域が進むと、精神保健・医療システムは患者に対処する…
ランキング参加中哲学 ■以前の記事「研究日誌(2022/3/19)フッサール他者論、リシールの空想身体論、ファンタシアを経由して間身体性へ?」で、坂本(2021)の次の文章を引用しておいた。 「フッサールは「知覚的空想(perzeptive Phantasie)」という概念…
■このほどオンラインジャーナル『こころの科学とエピステモロジー』Vol.5(2023)が刊行されました。●サイト公開日:5月15日。下記サイトより各記事がダウンロードできます。 https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/home ●J-Stage搭載版は…
ランキング参加中哲学 ■タイトルの通りです。論文名は"The sleeping subject: Merleau-Ponty on dreaming", by James Morley, in Theory & Psychology, Volume 9, Issue 1,1999. https://doi.org/10.1177/0959354399091005 この著者のものは数年前の「他者に…
日本心理学会事務局から会員宛て「日本学術会議声明への賛同」のお知らせメールがきたので、「反対します」とリプライしたところ、以下のようなやり取りになったので、差し支えない範囲でこの記事の後半に引用しておく。「学術会議の抜本的改革を求める!」…
[blog:g:11696248318758489486:banner] 研究日誌(2021/1/21)ヤスパース『精神病理学原論』/アモーダル知覚 を受けて、アモーダル知覚(感覚様相なき知覚)についてはさらに、今世紀に入ってからのアルヴァ・ノエ『知覚のなかの行為』(門脇俊介・石原…
ランキング参加中哲学 ■研究日誌(2022/6/15)「マッキンタイアの物語論的人格同一性(personal identity)について」についての続きになるが、リクールを読み返し、より納得できるフレーズを見つけたので、引用しておく。 「‥‥こうしてその名で指名される行…
■以前、本ブログ「研究日誌(2022/5/23~)『ディヴィッド・ルイスの哲学』(野上志学、青土社、2020)を読み‥‥」に、この本から以下を抜粋した。---------------------------------- [32]さらに、同一性の必然性を否定し、偶然的同一性を支持する古典的な例…
■セオドア・サイダー「人の同一性」『形而上学レッスン』の最後に面白い一節を見つけたので、引用する。-------------------------------------‥‥ほとんどの日常的なケースでは、心理的連続性と人の同一性は一致している。パーフィットによれば、その理由は…
■もう数週間前のこと、日本学術会議が、会員選考の経路をより透明化することを中心とした改革案を出した、という新聞記事を読みました。いまさらという気もするが、外部からは分かりにくい会員選考の手順が透明化されるというなら、一歩前進と言うべきかもし…
<■研究日誌(2022/4/15)フッサールの訳語について>の続編を書く。 まず、便宜のため4/15版を引用しておく: ■フッサールの訳語「共現前」について 『間主観性の現象学Ⅱーその展開』にはこうある。 訳注〔45〕Appräsentation 本書第一部訳注〔27〕にあるよ…
■A.マッキンタイア『美徳なき時代』(篠崎栄訳、みすず書房、1993(MacIntyre, A. After Virtue. University of Notre Dame Press, 1984))より引用する。 「‥‥デレク・パーフィットと他の論者は最近、厳密な同一性の規準と人格性の心理的連続性との間の対…
■『ディヴィッド・ルイスの哲学』(野上志学、青土社、2020)を読み、人文死生学の展開にとって役に立ちそうな箇所を書き留めておく(正確な引用ではないが)。 p.52 対応者理論による事象的可能性の分析。 xが可能的にFである(◇Fx)のは、ある世界wが存在…
■電子ジャーナル こころの科学とエピステモロジー 2022年5月25日 第4号 Vol.4, 2022 公開! 続いてJ-Stage公開準備中。創刊準備号~第3号の各記事は、各ISSUE目次からダウンロードできる他、J-Stageからのダウンロードが便利です。 第4号の主な内容 ・原…
■『物理世界のなかの心』(ジェグオン・キム (Jaegwon Kim)、太田雅子訳、勁草書房、2007)を読む。 世評高い本だが、物(脳神経系)への心のスーパーヴィーニエンスを擁護する本だと思ったら、いかにスーパーヴィーニエンスが駄目かを論証する本だった。の…
■フッサールの訳語「共現前」について 『間主観性の現象学Ⅱーその展開』にはこうある。 訳注〔45〕Appräsentation 本書第一部訳注〔27〕にあるように、「共現前Appräsentation」もKompräsentationと同様、「現前Präsentation」の対概念である。従来、Appräse…
■『こころの病いときょうだいのこころ : 精神障害者の兄弟姉妹への手紙』(滝沢武久著、京都:松頼社、2017)より。手紙に答える形での質疑応答から抜粋しておく。 Q「医師や支援者からは症状が安定してよくなっていると聞きましたが、発病前とはほど遠く、…
■「「間身体性」の近さと隔たりー間身体性の倫理学の構想(2)ー」(坂本秀夫著、跡見学園女子大学文学部紀要、第54号:125-144、2019)を読むの巻(2) 二度目に読んで、何となく分かってきた。その間、参照文献に挙がっていた、Richir, M. (2006). "Leib…
■間身体性は超越論的間主観性への通路になるか? 以前の記事(2021/5/1)の続きになるが。この記事で紹介した坂本秀夫氏の著書『他者としての身体』(ヴィツーソリューション、2009)を読んで、続きを書く。 「他者と私とは、いわば同じ一つの間身体性の器官…
■Psychothérapie phenoménologique , sous ladirection de Mareike Wolf-Ferida (Paris: MJW Fedition, 2006) がアマゾン経由で来たので、Ⅲ. Leiblichkeit et Phantasia, par Marc Richir (pp. 35-45) を読み始める。 思っていた通り、ひどく難解。 けれど、…
■もう一週間前になるが、京大霊長研所属(今年度定年退職)の心理学者正高信男氏に論文不正があったことが大学側の調査で判明したというニュースを読んだ。 ああ、やっぱり、と思った。氏の著書といえば、数年前に自分のコミュ障研究の必要性から、『コミュ…