読書日記

アグリッパ・ゆうの読書日記(2024/4/27)精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り

■『静かなる変革者たちーー精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り』(横山恵子・蔭山正子・こどもぴあ、ペンコム、2019)を読む。 心に残った箇所から抜き書き。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーそして、支援者…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2024/01/30)『女装の聖職者ショワジー』

■『女装の聖職者シュワジー』(立木鷹志著、青弓社、2000)を読む。 なんとも驚いたものだ。今まで女装の剣士シュヴァリエ・デオンものは何冊か読んできたが、その1世紀前、同じブルボン王朝のフランスに、それと劣らぬ妖しい美貌の人がいたなんてことは、…

研究日誌(2024/1/17)見当はずれの精神疾患アンチスティグマキャンペーン

■「精神疾患とスティグマ:わかっていること・いないこと」(山口創生著、『精神保健福祉』Vol.54, no.3, 216-223, 2023) を読む。 特に次の段落が目を引いた。 「‥‥精神疾患に対する正しい知識が長期にスティグマの減少につながるかは、近年の研究から疑問が…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2024/01/08):新型コロナウィルス武漢研究所流出説の決定版

■『新型コロナはどこから来たのか: 国際情勢と科学的見地から探るウイルスの起源』 (シャーリ マークソン (著), 高崎 拓哉 (翻訳)、ハーパーコリンズジャパン、2022)を読む。 以前の記事でもふれたが、その後の情勢の進展にともない、いよいよ重要性をま…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2023/12/9~2024/1/6)『悪魔の処方箋』で当事者家族が訴える向精神薬の恐ろしさ

ランキング参加中精神医療 ■『「今までありがとう、これからもお願い」: 精神科医療に翻弄された父親の12年の闘い 』(2022)、『悪魔の処方箋』(2023).ともに吉村敏男著、Kindle版.Amazon Services International LLC.を読む。 色んな意味で震撼させら…

研究日誌(2023/12/21)統合失調症は脳の心身症!

ランキング参加中精神医療 ■『統合失調症のノンアドレナリン説:開けゆく展望』(山本健一著、星和書店、2023)を読む。 第八節 脳も心身症となる(p.289ff) という小見出しの付いた興味深い節を見つけたので、忘れないうちに肝要な部分を引用しておきたい。…

研究日誌(2023/11/7)『遺伝と平等』「統合失調症の脳病態解明の到達点・未到達点」を読んで

ランキング参加中精神医療 ランキング参加中社会問題 ■「統合失調症の脳病態解明の到達点・未到達点」(柳下祥・笠井清登)『医学のあゆみ』(Vol.286,2023.8.5)を読む。 「症候群に対して対症療法として各困難に対する改善を支える生物学的な治療の開発と…

研究日誌(2023/10/23)『ストール精神薬理学エセンシャルズ』より統合失調症の病因について

ランキング参加中精神医療 ■『ストール精神薬理学エセンシャルズ:神経科学的基礎と応用Ver.5』(S.H.Stahl, 仙波純一他(訳)、メディカルサイエンスインターナショナル、2022)は、どんな精神医学テキストよりも詳しくてしかもわかりやすいが、1万2千5百…

研究日誌(2023/9/22)『マインド・フィクサー』より(続)

ランキング参加中精神医療 ■『マインド・フィクサー』については、研究日誌(2023/9/4)でも引用したが、ようやく読了し、そして結論の末尾に近く、意義深い文章をみつけたので、抜粋しておきたい。 「これまでとは対照的に、新しい精神医学は謙虚さを美徳と…

研究日誌(2023/09/19)『統合失調症は治りますか』(池淵恵美)より

ランキング参加中精神医療 ■池淵恵美著『統合失調症は治りますか:当事者・家族・支援者の疑問に答える』日本評論社、2022)より、抜粋する。 「Q21 統合失調症という病気は治りますか。 Ans 私が一番残念に思っているのは、「人類がまだ統合失調症を克服で…

研究日誌(2023/8/6) 観劇は他者経験のモデルにはならないようだ:『像意識と平面構成:フッサール想像論の未開の境地』(伊集院令子)を読みながら

ランキング参加中哲学 ■以前の記事「研究日誌(2022/3/19)フッサール他者論、リシールの空想身体論、ファンタシアを経由して間身体性へ?」で、坂本(2021)の次の文章を引用しておいた。 「フッサールは「知覚的空想(perzeptive Phantasie)」という概念…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2023/05/07)『心病むわが子』(アン・デヴソン、堂浦恵津子訳、晶文社、1995)を読む

ランキング参加中精神医療 ■表記の本を読む。原著は1991発行で少し古いが、書かれているのは今でも未解決な問題だ。心に残ったくだりを引用しておく。 なお、言うまでもないが、下記に「分裂病」とあるのは、現在「統合失調症」と呼ばれている疾患である。こ…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2023/2/5)『精神破壊:うつ~統合失調症~入院~回復までの道のり』を読む

■『精神破壊:うつ~統合失調症~入院~回復までの道のり』(守門丈・守門紀著、東京図書出版、2018)を読む。 「‥‥子供の友達を泥棒と思い込むのは毎度のことであり、‥‥妻にとっては仕方のないことかもしれない。現実の記憶と想像したことの区別がつかない…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/9/22)『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』を再び取り上げる!

■『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(樋田毅、文芸春秋、2021)を少し前に本ブログに書いたが、より整理した形で再度取り上げます。 革マル派に殺害された文学部の川口君の一年下の後輩でその後朝日新聞記者になった著者が、半世紀後に当…

研究日誌(2022/9/9)人の同一性について

■セオドア・サイダー「人の同一性」『形而上学レッスン』の最後に面白い一節を見つけたので、引用する。-------------------------------------‥‥ほとんどの日常的なケースでは、心理的連続性と人の同一性は一致している。パーフィットによれば、その理由は…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/7/22):『彼は早稲田で死んだ:大学構内リンチ殺人事件の永遠』を読んで思う

■最近、『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(樋田毅、文芸春秋、2021)を読みました。革マル派に殺害された文学部の川口君の一年下の後輩でその後朝日新聞記者になった著者が、半世紀後に当時の状況を生々しく描き出し、当時の革マル派幹…

研究日誌(2022/6/23)フッサールの訳語について(第2弾)

<■研究日誌(2022/4/15)フッサールの訳語について>の続編を書く。 まず、便宜のため4/15版を引用しておく: ■フッサールの訳語「共現前」について 『間主観性の現象学Ⅱーその展開』にはこうある。 訳注〔45〕Appräsentation 本書第一部訳注〔27〕にあるよ…

研究日誌(2022/6/15)マッキンタイアの物語論的人格同一性(personal identity)について

■A.マッキンタイア『美徳なき時代』(篠崎栄訳、みすず書房、1993(MacIntyre, A. After Virtue. University of Notre Dame Press, 1984))より引用する。 「‥‥デレク・パーフィットと他の論者は最近、厳密な同一性の規準と人格性の心理的連続性との間の対…

研究日誌(2022/5/31~)可能世界論で途切れ途切れに思うこと

■『ディヴィッド・ルイスの哲学』(野上志学、青土社、2020)を読み、人文死生学の展開にとって役に立ちそうな箇所を書き留めておく(正確な引用ではないが)。 p.52 対応者理論による事象的可能性の分析。 xが可能的にFである(◇Fx)のは、ある世界wが存在…

研究日誌(2022/5/24)心身スーパーヴィーニエンス説のダメっぷり

■『物理世界のなかの心』(ジェグオン・キム (Jaegwon Kim)、太田雅子訳、勁草書房、2007)を読む。 世評高い本だが、物(脳神経系)への心のスーパーヴィーニエンスを擁護する本だと思ったら、いかにスーパーヴィーニエンスが駄目かを論証する本だった。の…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/5/2):『真説 日本左翼史:その源流1945-1960』池上彰・佐藤優(講談社、2021)

続編の『激動 日本左翼史 1960-1972』を先に読んだが、厳密に同時代人である評者にとっては知っていることばかりで余り面白くなかった。それに対してこちらは、評者が小中学生の頃で、うっすらと記憶にある程度しか知らないので、結構ためになった。 そもそ…

研究日誌(2022/4/15)フッサールの訳語について

■フッサールの訳語「共現前」について 『間主観性の現象学Ⅱーその展開』にはこうある。 訳注〔45〕Appräsentation 本書第一部訳注〔27〕にあるように、「共現前Appräsentation」もKompräsentationと同様、「現前Präsentation」の対概念である。従来、Appräse…

研究日誌(2022/4/11)『こころの病いときょうだいのこころ: 精神障害者の兄弟姉妹への手紙』より。

■『こころの病いときょうだいのこころ : 精神障害者の兄弟姉妹への手紙』(滝沢武久著、京都:松頼社、2017)より。手紙に答える形での質疑応答から抜粋しておく。 Q「医師や支援者からは症状が安定してよくなっていると聞きましたが、発病前とはほど遠く、…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/02/18)ドストエフスキー『白痴』を半世紀以上たって再読した

■『白痴』(ドストエフスキー、米川正夫訳、岩波文庫、改版1992)を半世紀以上たって再読しました。 初読はたぶん、10代末の頃か。きっかけは、小林秀雄のドストエフスキー論に引用されている夢についての洞察が何頁にあったか、正確なところを、自分の仕事…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/2/5)『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』(池上彰・佐藤優、講談社、2021)

■『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』(池上彰・佐藤優、講談社、2021)を読む。 評者のように同時代を生きた人間にとっては、周知のことばかりで特に目新しさはない。結論は第3章の最後に佐藤優の言葉として述べられているので、長文…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2021/12/14)『女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯』に深甚なる感銘を受ける

■窪田般弥著『女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯』(白水社、1995)を遅まきながら一読しました。 シュヴァリエ・デオンものは、アニメ「シュヴァリエ」、斎藤明子作『仮想の騎士』と、今世紀に入ってからのフィクションものに接してきて、もう一つ肝心…

研究日誌(2021/8/8)『数学に魅せられて科学を見失う:物理学と「美しさ」の罠』(ホッセンフェルダー著、吉田三知世訳、みすず書房、2021)を読みながら、人文死生学研究会の発表を反省する

「理論物理学で現在人気のテーマは、単純さ、自然さ、そしてエレガントさだ。これらの言葉は、厳密に言えば、恒久的な定義を得ることは決してないし、私も本書でこれらを定義しようと試みるつもしはない。これらの言葉がいまどのように使われているかという…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2021/6/9)『人は簡単には騙されない』(ヒューゴ・メルシエ、青土社、2021)で初めて知る毛沢東の正体

■『人は簡単には騙されない:嘘と信用の認知科学』(ヒューゴ・メルシエ、高橋洋訳、青土社、2021)を読む。 原書は英語だが著者はフランスの認知科学者。関連性理論のスペルベルの弟子らしい。 というか、そもそも関連性理論を20年前に読んだときには、スペ…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2021/5/3)『当事者が語る精神障がいとリカバリー』で発見したゲームとホメロスの関係/当事者と家族のすれ違い

■『当事者が語る精神障がいとリカバリー:続精神障がい者の家族への暴力というSOS』(YPSヨコハマピアスタッフ協会&影山正子、編著、明石書店、2018)を読む。ためになる一文をみつけたので、忘れないうちに引用しておく。 「ひきこもっていた時、テレビ…

研究日誌(2012/3/26)「人は身体に生まれるのではない、身体になるのだ」

『身体を引き受ける』(ゲイル・サラモン著、藤高和輝訳、以文社、2019)を読んでいて、見出しのような面白い表現にであったので、抜き書きしておく。 「チャールズ・シェーファーソンは精神分析における身体の構成を、「小さな有機体がその身体を探し求める…