2022-01-01から1年間の記事一覧

研究日誌(2022/12/22)アモーダル知覚再論

[blog:g:11696248318758489486:banner] 研究日誌(2021/1/21)ヤスパース『精神病理学原論』/アモーダル知覚 を受けて、アモーダル知覚(感覚様相なき知覚)についてはさらに、今世紀に入ってからのアルヴァ・ノエ『知覚のなかの行為』(門脇俊介・石原…

研究日誌(2022/10/1)リクールの物語的自己同一性(personal identity)について

ランキング参加中哲学 ■研究日誌(2022/6/15)「マッキンタイアの物語論的人格同一性(personal identity)について」についての続きになるが、リクールを読み返し、より納得できるフレーズを見つけたので、引用しておく。 「‥‥こうしてその名で指名される行…

研究日誌(2022/9/29)可能世界再論、必然的同一性と偶然的同一性

■以前、本ブログ「研究日誌(2022/5/23~)『ディヴィッド・ルイスの哲学』(野上志学、青土社、2020)を読み‥‥」に、この本から以下を抜粋した。---------------------------------- [32]さらに、同一性の必然性を否定し、偶然的同一性を支持する古典的な例…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/9/22)『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』を再び取り上げる!

■『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(樋田毅、文芸春秋、2021)を少し前に本ブログに書いたが、より整理した形で再度取り上げます。 革マル派に殺害された文学部の川口君の一年下の後輩でその後朝日新聞記者になった著者が、半世紀後に当…

研究日誌(2022/9/9)人の同一性について

■セオドア・サイダー「人の同一性」『形而上学レッスン』の最後に面白い一節を見つけたので、引用する。-------------------------------------‥‥ほとんどの日常的なケースでは、心理的連続性と人の同一性は一致している。パーフィットによれば、その理由は…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/7/22):『彼は早稲田で死んだ:大学構内リンチ殺人事件の永遠』を読んで思う

■最近、『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(樋田毅、文芸春秋、2021)を読みました。革マル派に殺害された文学部の川口君の一年下の後輩でその後朝日新聞記者になった著者が、半世紀後に当時の状況を生々しく描き出し、当時の革マル派幹…

日本学術会議の抜本的改革を求める!

■もう数週間前のこと、日本学術会議が、会員選考の経路をより透明化することを中心とした改革案を出した、という新聞記事を読みました。いまさらという気もするが、外部からは分かりにくい会員選考の手順が透明化されるというなら、一歩前進と言うべきかもし…

追悼!安倍晋三元首相:左翼の暴力的ヘイトスピーチの積み重ねがテロルの呼び水になったのではないか?

■安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に凶弾で倒れた。QUADの枠組みを作るなど、外交・安全保障上の功績は大きい。冥福を祈る。 それにつけても、容疑者の言い分や政治的立場はどうあれ、安倍氏をターゲットとした左翼による長年の暴力的ヘイトスピーチの積…

研究日誌(2022/6/23)フッサールの訳語について(第2弾)

<■研究日誌(2022/4/15)フッサールの訳語について>の続編を書く。 まず、便宜のため4/15版を引用しておく: ■フッサールの訳語「共現前」について 『間主観性の現象学Ⅱーその展開』にはこうある。 訳注〔45〕Appräsentation 本書第一部訳注〔27〕にあるよ…

研究日誌(2022/6/15)マッキンタイアの物語論的人格同一性(personal identity)について

■A.マッキンタイア『美徳なき時代』(篠崎栄訳、みすず書房、1993(MacIntyre, A. After Virtue. University of Notre Dame Press, 1984))より引用する。 「‥‥デレク・パーフィットと他の論者は最近、厳密な同一性の規準と人格性の心理的連続性との間の対…

研究日誌(2022/5/31~)可能世界論で途切れ途切れに思うこと

■『ディヴィッド・ルイスの哲学』(野上志学、青土社、2020)を読み、人文死生学の展開にとって役に立ちそうな箇所を書き留めておく(正確な引用ではないが)。 p.52 対応者理論による事象的可能性の分析。 xが可能的にFである(◇Fx)のは、ある世界wが存在…

オンラインジャーナル「こころの科学とエピステモロジー」 2022年5月25日 第4号公開!

■電子ジャーナル こころの科学とエピステモロジー 2022年5月25日 第4号 Vol.4, 2022 公開! 続いてJ-Stage公開準備中。創刊準備号~第3号の各記事は、各ISSUE目次からダウンロードできる他、J-Stageからのダウンロードが便利です。 第4号の主な内容 ・原…

研究日誌(2022/5/24)心身スーパーヴィーニエンス説のダメっぷり

■『物理世界のなかの心』(ジェグオン・キム (Jaegwon Kim)、太田雅子訳、勁草書房、2007)を読む。 世評高い本だが、物(脳神経系)への心のスーパーヴィーニエンスを擁護する本だと思ったら、いかにスーパーヴィーニエンスが駄目かを論証する本だった。の…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/5/2):『真説 日本左翼史:その源流1945-1960』池上彰・佐藤優(講談社、2021)

続編の『激動 日本左翼史 1960-1972』を先に読んだが、厳密に同時代人である評者にとっては知っていることばかりで余り面白くなかった。それに対してこちらは、評者が小中学生の頃で、うっすらと記憶にある程度しか知らないので、結構ためになった。 そもそ…

研究日誌(2022/4/15)フッサールの訳語について

■フッサールの訳語「共現前」について 『間主観性の現象学Ⅱーその展開』にはこうある。 訳注〔45〕Appräsentation 本書第一部訳注〔27〕にあるように、「共現前Appräsentation」もKompräsentationと同様、「現前Präsentation」の対概念である。従来、Appräse…

研究日誌(2022/4/11)『こころの病いときょうだいのこころ: 精神障害者の兄弟姉妹への手紙』より。

■『こころの病いときょうだいのこころ : 精神障害者の兄弟姉妹への手紙』(滝沢武久著、京都:松頼社、2017)より。手紙に答える形での質疑応答から抜粋しておく。 Q「医師や支援者からは症状が安定してよくなっていると聞きましたが、発病前とはほど遠く、…

研究日誌(2022/3/19)フッサール他者論、リシールの空想身体論、ファンタシアを経由して間身体性へ?

■「「間身体性」の近さと隔たりー間身体性の倫理学の構想(2)ー」(坂本秀夫著、跡見学園女子大学文学部紀要、第54号:125-144、2019)を読むの巻(2) 二度目に読んで、何となく分かってきた。その間、参照文献に挙がっていた、Richir, M. (2006). "Leib…

研究日誌(2022/2/26)間身体性は間主観性への通路になりうるか?

■間身体性は超越論的間主観性への通路になるか? 以前の記事(2021/5/1)の続きになるが。この記事で紹介した坂本秀夫氏の著書『他者としての身体』(ヴィツーソリューション、2009)を読んで、続きを書く。 「他者と私とは、いわば同じ一つの間身体性の器官…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/02/18)ドストエフスキー『白痴』を半世紀以上たって再読した

■『白痴』(ドストエフスキー、米川正夫訳、岩波文庫、改版1992)を半世紀以上たって再読しました。 初読はたぶん、10代末の頃か。きっかけは、小林秀雄のドストエフスキー論に引用されている夢についての洞察が何頁にあったか、正確なところを、自分の仕事…

アグリッパ・ゆうの読書日記(2022/2/5)『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』(池上彰・佐藤優、講談社、2021)

■『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』(池上彰・佐藤優、講談社、2021)を読む。 評者のように同時代を生きた人間にとっては、周知のことばかりで特に目新しさはない。結論は第3章の最後に佐藤優の言葉として述べられているので、長文…

アニメ『家なき子』(1977年製作)を見る

■小学生の頃は科学少年で、「ファーブルの昆虫記」とか「アンナプルナ登頂」とか、野尻抱影の「天体の神秘」シリーズとか、高学年になってはコナンドイルに夢中だったので、児童文学の名作をほとんど読み損ねてしまっていた。 数年前、『小公子』『小公女』…