映画『世界で一番美しい少年』を見る

■一昨日(12月27日)は、月曜のこととて図書館も休みだったので、また新宿まで足を伸ばし、スエーデンのドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』を見た。

 新宿東南口を出てすぐ左に曲がったところの縦に細長いビルの地下にある、「新宿シネマカリテ」という小劇場だ。

 正午過ぎの時刻ということで、十数名の観客はほとんどがシニアだ。思った通り女性が多い。3,4人のグループで来ている他は、一人客の女性だ。シニアカップルが一組。その他に、シニア男性は珍しく私以外にも一人いた。こういう題名の映画を見に来るのは、男性としてはけっこう勇気がいるだろう。私は慣れているが。

 1970年に日本でも公開されて見に行った、『ベニスに死す』という映画があった。原作はトーマス・マン。映画の方はルキノ・ヴィスコンティ監督だ。

 私は原作の方を先に読んでから映画を見に行った。老芸術家アッシェンバッハの魂を奪った美少年タジオを演じたのが、15歳のビョルン・アンドルセンだった。

 今度の映画はその、世界で一番美しい少年ビョルンの栄光と零落のドキュメンタリーである。

 見終わった衝撃は、『リトル・ガール』にも勝るとも劣らない。人生の真実を見た、という気がした。

 ビョルン少年は1971年に来日もしている。この映画ではカンヌ、パリ、そして日本と、栄光の時代の足跡を、老いさらばえたビョルンが辿る、という構成になっている。

 日本に来た時にはかなりの話題になり、「永遠の二人」という日本語の歌もレコードで出しているという。それにしては来日の記憶がないのが残念だが。でも、この映画のエンディング曲として、その永遠の二人の歌が流れたのは、粋な計らいというべきか。西洋人の歌う日本語の歌にありがちな訛りがなく、ジャニーズの歌といっても通用するような、いかにもティーンの少年の声で歌われていた。もちろん16歳で背も高いから声変わりしているが、男声というより魅力的な少年の声だった。

 また、池田理代子さんも登場して、ベルばらのオスカルの作画のモデルが当時のビョルン少年だったことも明かしていた。そういえば鋭角的でしかもはかなげなオスカルの顔立ちは、ビョルン少年に似ていないこともない。

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